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「その手紙だけ残して、光は姿を消していました。」
静かに清子さんは告げる。
やっぱりそうだ。
あのシオンはきっと、光君からのさよならの
メッセージ。
…もう私には会うつもりはないんだと。
手紙から顔を上げた私に清子さんは更に告げる。
「姉が亡くなった時もあの子は二週間ほど姿を消し
ました。
子供じゃないから待っていればまた戻って来るで
しょうけど…迎えに行ってもらえませんか?
遠くへは行ってないはずです。」
「えっ…」
「あの子はきっと迷っているんです。また大切な人が居なくなってしまうことを恐れてる。」
「私で…いいんでしょうか?」
光君はもしかしたら一人になりたいのかもしれ
ない。
そう考えたら、私が探しに行ってもいいのか不安に
なる。
迷惑なんじゃないかって。
でも本当は…光君に会いたい。
「わざわざ葉月さんへの手紙を残して行ったんで
すよ。
こんなの、本当は会いたいって言ってるようなもの
じゃないですか。」
“分かりやすいんだから”と、清子さんは少し
笑った。
でもその笑顔の奥に、光君を心配な気持ちが滲んでる。
「葉月さん…お願い出来ますか?」
「はい。」
しっかりと返事を返した私は、今度は光君を探しに
走った───。
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