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マリーゴールドの花束
探しに出たはいいけど、当ては全くない。
だって光君とはいつもあの花屋で会うのが習慣に
なっていたから。
清子さんは遠くへは行ってないはずだと言って
いたし、とりあえず近場から探して行く。
最寄りの駅、近所のスーパー、コンビニなんかも。
背格好の似てる人を見かける度にハッとする。
でも光君は何処にも居ない。
「はぁっ…」
立ち止まって少し息を整えた。
自分で思っている以上に気持ちが急いている
らしい。
このまま探し出せなかったら、もう二度と会って
くれないんじゃないかって…そんなことを考えて
しまう。
本当に今更だけど、私は光君のことを何も知らな
かったんだなって思わされた。
彼が話さなくなった理由とか、私のことをあの夜の
ずっと前から見ていてくれたこと。
そうやって、知らなかったことを数えたらキリが
ない。
でも一つだけ確かなことがある。
それは───私にとって光君はとっても大切な人
なんだってこと。
ただの友達じゃなくて。
もっとそれ以上の。
「もしかしたら…」
祈るような気持ちで私は自宅のマンションへと
向かった。
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