84人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも二人で歩く帰り道を一人で駆ける。
気づけばいつの間にか日は落ちてきて、空は茜色に
染まり始めた。
お願い。
どうか光君がいますように───。
そんな私の願いは届かなかった。
「はぁっ…はぁっ…はぁ」
いつも何度も手を振って別れるマンションの前。
もしかしたら待っていてくれるんじゃないかって
そんな淡い期待をしていた。
でも現実はそんなに甘くない。
マンションの前に光君の姿はなかった。
「ふぅ…」
深く息をついて空を見上げる。
思いつく場所はもう全て探したし、もうここ以外に
考えられる場所はなかった。
…どうしたらいいんだろう?
途方に暮れた私はスマホを取り出す。
こんなことになるなら、もっと早く連絡先を聞いて
おけばよかった。
大学に通っていたなら、今は使ってなかったと
してもスマホくらい持ってはいるだろうから。
一旦、清子さんの元に戻ろうと花屋に向かおうと
した時───握りしめていたスマホが着信を知らせた。
「え…」
画面を見るとそれは知らない番号で、いつも
だったら間違い電話だろうと思って無視するけど
私は迷わず通話を押す。
「…もしもし?」
最初のコメントを投稿しよう!