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私の告白を聞いてパッと顔を上げた光君。
やっと顔を見ることが出来てほっとした。
驚いたような、どこか戸惑っているようなそんな顔。
でもうっすらと頬に赤みがさした。
「これから光君のいろんなことを教えて。
少しずつでいいから。」
「………。」
「無理に話さなくていいよ。話したくなったら
話して欲しい。
こうやって一緒に居るだけで楽しいから。
だからもう一人でどこかに行ったりしないで。」
“ね?”と、問いかけると、その綺麗な瞳はみるみる
うちに涙の膜を作る。
それがじわりと広がって縁から溢れ落ちそうに
なった時、そっと手を伸ばした。
いつか彼がしてくれたみたいに涙を隠してあげ
たい。
そう思った私は立ち上がって、長身の彼の頭を胸に 抱き寄せた。
ぎゅっと強く腕に力を込める。
「私がいるから。」
私はどこにも行かないよって、ずっと側に居る
よって伝えたかった。
光君は何も言わなかったけどそれに応えるように
抱き締め返してくれた。
今はまだその心の傷は癒えてはいないだろうけど
でもきっと大丈夫。
いつか前を向ける日が来ることを私は信じてる───。
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