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それから花屋に帰ったのは辺りがずいぶん暗く
なった頃。
もう店は閉まってる時間だったけど、清子さんは
店先に立っていた。
私達の姿を確認すると、いつものあの穏やかな笑顔で出迎えてくれる。
「あんたまた手なんか繋いじゃって何してたのよ。」
「………。」
前までだったらこうやってからかわれるとすぐに手を離してくれたんだけど、今は全く離してくれる
気配がない。
みしろ見せびらかしているような気さえする。
チラリと私に視線を送った清子さんが意味深な笑みを浮かべたから、とたんに恥ずかしくなった。
でも光君が帰って来てホッとしたってその表情に
滲んでる。
清子さんに何度も何度もお礼を言われたけど、お礼を言うのはむしろ私の方だと思った。
それからまた光君は私を家まで送ってくれたけど
やっぱり手は繋いだまま離れることはない。
私達の間に会話はなかったけど、その顔を見れば
分かる。
光君がとても機嫌がいいことくらい。
そんなに嬉しそうにされたら、手を繋いだままなのは恥ずかしいけど何も言えなくなった。
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