84人が本棚に入れています
本棚に追加
───それから季節は流れて春。
光君は大学に入り直して、また通い始めた。
今日の授業は午前だけだから、昼過ぎには帰って
来るはず。
それを知っていた私は彼には秘密で半休をとって
いた。
だって今日は特別な日だから。
「こんにちは。清子さん。」
「いらっしゃい。」
彼が帰って来るよりずっと早く、花屋に到着した私は計画を実行する。
それには清子さんの協力が絶対に必要。
こっそり相談したら、清子さんは快く受け入れて
くれた。
「私、不器用なんですけど大丈夫ですか?」
「あははっ、大丈夫ですよ。
葉月さんからなら何だってあの子は喜ぶん
だから。」
そうだったらいいな。
でもどうせなら綺麗な物を贈りたい。
前にあげた不格好なクッキーですら彼は喜んで
くれたから、きっとどんな物でも私が一生懸命
作ったことが分かれば彼は喜んでくれるとは思う
けれど。
清子さんに教えてもらいながら少しずつ、丁寧に
進めて行って何とか形になってくると嬉しくなる。
去年までの…光君と出会う前の私からはとても考え
られない。
最初のコメントを投稿しよう!