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「誕生日おめでとう。」
私が差し出したのは、オレンジとイエローの
マリーゴールドで作った花束。
誕生日に何をプレゼントしたらいいかってたくさん
考えたけど、やっぱりこれしか浮かばなかった。
マリーゴールドの花言葉は“悲しみ”。
それは誕生日には似合わないかもしれない。
でも、光君がくれた一本のマリーゴールドは
私の悲しみを癒やしてくれた。
これから先きっとまた悲しいことが起こってしまう
ことがあるかもしれない。
でも、光君なら乗り越えて行けると思うから。
「………。」
「光君?」
彼は花束を受け取るとじっと見つめていた。
清子さんは上出来だって言ってくれたけど、どこか
おかしい所があったのかな。
不器用だから確かにあんまり自信はないけどでも
気持ちはしっかりこもってる。
反応を伺う私の前で彼はふっと息をついた。
そして顔を上げると───
「ありがとう。」
そう言ってふわりと笑った。
初めて会ったあの日も見せてくれた、あの優しい
笑顔で。
マリーゴールドの花束が彼の腕の中でキラキラと
輝いて見えた。
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