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「若くして夫を病気で亡くした姉は、光を女手一つで育てていました。
元々あの花屋は私と姉の二人で切り盛りしていた
ので、独身の私にとってもあの子は息子のように
思えますけど。」
清子さんにとって光君が息子のようだと言うのは 見ていて分かる。
だって初めは清子さんがお母さんだと思っていた
くらいだから。
「ちょうど一昨年の春…その日は光の誕生日で
姉はプレゼントに大きな花束を用意していました。年頃の男の子にそんな物って思うかもしれません
けどあの子は昔から花が好きだったから。」
「そうなんですね。」
「ええ。」
それも見ていて分かった。
光君はいつも丁寧に花を扱っていたから。
本当に花が好きなんだなって。
「姉は花束を持って、店の前であの子が大学から
帰って来るのを待っていたんです。
その時、どこかに寄っていたのかいつもと違う道
から光が帰って来ました。
ちょうど道路の反対側から。
店の前に立つ姉を見つけた光は声をかけたんです。
それに応えて姉は道路を渡ろうとしました。
そしたら…車にはねられて…」
「………え」
「その日のうちに姉は亡くなりました。」
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