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「突然こんな話をしてすみませんでした。」
「いいえ。」
そこから先は何も言えなかった。
聞いていなかったかったんだから当たり前だけど
光君のことを私は何も知らなかったんだなって
改めて思う。
勝手に仲良くなった気でいたけれど。
一体、どんな気持ちで今日まで過ごして来たん
だろう。
それを思うと胸が痛んで仕方なかった。
「だからやっぱり、葉月さんは特別なんです。」
「特別…?」
「だって、姉が亡くなってから誰とも関わろとしな
かったのに。
あの子は葉月さんに花をプレゼントしたんですよ。」
光君と初めて会ったあの夜を思い出す。
光君のくれた一本のマリーゴールドを。
どうして私にそんなに優しくしてくれたんだろう?
それは今でも分からない。
「また花を買いに来て下さいね。」
「あ、待って下さい。これを光君に渡してもらえ
ますか?」
連絡先を書いたメモを清子さんに渡すと、黙って
頷いて病室を出て行った。
お見舞いに買って来てくれた物を見つめながら
考える。
初めて清子さんに会った時、事情を話すと清子さんは驚いていたけど嬉しそうでもあった。
それは光君が、自分以外の人と関わったことが嬉し
かったからなんだ。
その夜、私はなかなか寝付くことが出来なかった。
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