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暗闇のなかで、瞳を開いた。
傍らで、黒く柔らかい温もりが上下する。
玲は今晩、先日、私がお遣いに行った小屋の主と会う予定だ。
だから、今夜は私の布団のなかで、悪が眠っている。
玲の話によると、小屋の主は悪の姿を見てはいけないらしい…
「大人しいのにね…」
人に襲いかかることはないと思うのだけれど…
玲が私に悪を預けたことには、何か特別な理由があるのかもしれない。
私は、小さな寝息を立てる狼の頭を撫でた。
そのとき、わずかに冷気を感じた。
部屋の扉がゆっくりと開くと、里花が立っていた。
「さっちゃん…」
さっちゃん、とは里花のことだ。
里花は強くて優しい女の人だ…
彼女は、いつも私をかまってくれる。
一緒に玲のお手伝いをしたり、山を散策したり、ごはんを作ったり…
私が我がままを言って不機嫌になると、私を叱ったり、ときには励ましたりする。
そして、私が眠れない夜には絵本を読んでくれる。
私が眠るまで、そばにいるのだ。
そういうの、家族っていうのかな?
私がぼんやりとしていると、里花は私のベッドの上にどすんと腰をおろした。
彼女は汗でかたまり、乱れた髪をかき上げると、大きなため息をついてうなだれた。
窓から漏れる月明りの下、里花が肩を上下させながら乱れた呼吸を整える様子を見つめていると、彼女の様子が普段とは違うことに気づいた。
「どうしたの…」
彼女は血液が滲んだ腕を押さえながら、鋭い視線をこちらに向けた。
「まずいことになったわ…」
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