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唖然とするクラスメイト達の視線を全く気にせず、彼は自宅にいる一之瀬と過ごせるからか鼻歌まじりの上機嫌で教室を出ていく。
登校時とは違いスキップでもしそうな軽やかな足取りだ。
「もしかして、登校時の不機嫌って一之瀬家に置いて学校に来ないといけなかったから? 本当に友情なのかあれ」
宇宙人と話をしている気分だった。
井村は嫌な気分で羽田の出て行った教室のドアを見る。
差別主義の井村の中で、羽田は大きくマイナスの存在へと傾いている。
まさに、このクラスの「女もどき」同様の、種類は違うが、自身の中で『異物』扱いへと変わりつつある。
「でもさ、ある意味『あれで良かった』ってことかな」
高木の言葉に近藤が神妙な顔で頷く。
井村には理解できない言葉ばかりだ。
二人に目をやると高木が苦笑する。
「一之瀬に向ける『あの友情』が恋情として恋人に向かなくて良かったのかもしれんな。ってことさ」
とっくの昔に知ってはいたけど、あいつはイカれてるからな。
高木と近藤の言葉に、ぞわりと胸の内が冷たくなった。
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