6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

2/15
124人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「よし、やるよ。 ふたりでやればすぐに終わるから」 早速、データを開き、準備をはじめる。 「でも先輩、今日、同期飲みなんですよね……?」 申し訳なさそうに後輩が上目でうかがってきた。 それを笑顔でかわす。 「それよりこっちが大事でしょ? ほら、今日中に送ってあいつをぎゃふんと言わせてやろう?」 「……ぎゃふんは古いです」 やっと少しだけ笑い、彼女も書類の修正をはじめてほっとした。 終わったのは二時間後だった。 「よし、これで文句ないでしょ」 仕様書を先方へ送り、帰り支度をはじめる。 この時間ならまだ同期飲み会へ顔を出すくらいできそうなので、仲のいい恵美(えみ)へメッセを送った。 「あ」 唐突に後輩が間抜けな声を出し、そちらを見る。 「先輩、すみません。 規格変更の連絡、迷惑メールに入っていました……」 みるみるすまなそうに彼女が小さくなっていく。 「次から気をつければいいよ。 それにパソコンも迷惑メールに入れたいくらい、あいつが嫌いだってことだよ、きっと」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!