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【2020年5月10日】
-1-
ふたりは団地の向かい合わせに暮らす。学校では挨拶するくらいの間柄だ。だけど、男の子は彼女のことが気になっていて、いつも学校で見かけるのが好きだった。
ウイルスが街に流行って、部屋から出られなくなったふたり。どうしても話したかった彼は発明した。飛行機付きの糸電話。ある夜、思い切って飛ばしてみた。1号、2号、3号と目標には到達できないが、7号でついに目的地に到達した。
飛行機の手紙を読んでくれないかな?男の子は窓に貼り付いて返事を待った。しばらく経って、窓に飛行機がぶつかった。大義を果たした7号には二文字の返事が書き加えられていた。彼はふて寝した。
【ある母親の愚痴】
うちの子は勉強もしないで、いつもゲームと飛行機の話ばかりしてくる。休校期間中も窓の外ばかり見ていて、机の前にはいない。課題が終わらなくても知らないわよ。彼に息子のことを相談しても「そんな時代はあるモンさ。」と上機嫌。男は馬鹿ばかりね。
今朝は出勤前に紙飛行機がたくさん落ちていたので、慌てて拾い集めてゲンコツを入れてきた。
-2-
元々女の子は度々学校を休んでいた。夏でも長袖を好んで、いつも青白かった。しかし彼女は口喧嘩も強くて、学校では男女問わず恐れられていた。殴られても一度も泣かないから痛いのが効かないと噂だった。
彼女はその晩も静かに部屋にいた。明かりも灯さず、部屋にいた。音を遮断するために大きなヘッドホンをつけていた。先には何も無かった。
彼女の両親はちょっとしたことで怒ることがよくある。壁紙はよく見れば傷だらけだ。彼女は静かにすることが大切だった。だから窓の外の異変に気づかなかった。彼女がそれに気づいたのは5号が風に煽られあと一歩で届かなった無念のフライトからだった。それから暫くして届いた紙飛行機には短いメッセージと糸電話がついていた。それにたいして鉛筆で返事を返した彼女は一発で目的地に届けられた。目的地の少年は紙飛行機を見てからカーテンも締めて明かりも消した。下手くそな奴だと思った。
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