風が吹いた

【2020年5月11日】

　翌日の昼、男の子はひたすら紙飛行機を研究した。YouTubeや飛行機設計士の人のブログなど、ひたすら調べて、もっと真っ直ぐ、鋭く届く形を極めた。
そして夜には夕飯もそこそこに飛行実験を開始した。メッセージももっと鋭くなくては、短くまとめた8号は予想以上にうまく行き、目的地に到達した。カーテンのないその部屋からは返事がなく、彼は9号、10号と飛ばし続けた。それでも返事がないので、彼はカーテンを閉めずにベッドで見張っていたが、気づけば朝だった。

【ある母親の怒り】
　息子が最近おかしいと気づいたのは朝の光景だった。細い紐なので気づきにくいが、向かいの窓まで紐が垂れ下がっている。またかよと思い、撤去しようとしたが、ベランダで息子に腕を噛まれるほどの妨害を受けて、ウンザリして無視した。彼にLINEで相談したら「思春期だね、初々しい」なんて甘ったるいこと言っているので、今度逢うとき殴っておこうと決めた。