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雨の匂いがする。
そう思った時には、頬に一滴落ちる。
この季節に、あの人はいなくなった。
『雨で増水した川に流された』と聞いた時も、窓の外からしとしと降る音が聞こえていた。
皆が『何故雨の日に?』と話す声を背中で聞きながら、いなくなる前日に自分が河川敷にサッカーボールを忘れたと、あの人に話していた事を思い出していた。
今になって、雨が身に染みていく。
濁流の飛沫を上げる川を見ながら、誰も知らない自分を断罪し続ける。
紫陽花だけが知っている。
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