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マリーは孤児だった。
孤児院で拾われ毎日この街で奉仕活動をし、人々の助けをしながら暮らしていた。
その国は街の外に決して出てはいけないと言われていたが、幼いマリーにその理由は分からない。
街の入口はいつしか門番が立ち、固く門が閉じられていた。
「なぜまちの外に出てはいけないの?」
マリーがそう尋ねても大人たちは、
「恐ろしいものがいるからさ。いけないよ、命が惜しければな」
「マリーは良い子でしょう?決して出てはいけないわ」
そう言い聞かせるだけだった。
ある日マリーは街の隅で、いつものように掃除をしていた。
今日に限って一人きりでいたマリーは、突然やってきた大きな鳥のようなものに掴まえられ、空へと舞い上がった。
マリーはあまりのことに、叫ぶことも出来ずになされるがまま。
鳥はマリーを連れたまま空を行き、ようやく地に降り立った。
マリーは気が抜けたまま、立ち上がることも出来ず地に転がった。
「あっ……」
そして震えながらようやく、自分を攫った鳥の姿を自らの目で見る。
普通の鳥では無かった。
翼はある、鉤爪もある、嘴もある。
しかし、今まで見たことがないほどに大きい。
それに何かが普通の鳥とは違う上、近くにいる人間ではない何者かと話を始めた。
その大鳥の相手は、二足歩行にも関わらず口が裂け角が生え、尾がある。
どう見ても人間ではない。
大鳥とその何者かの会話は続く。
「…ソレデ、アノ方ハドチラニ行カレタ?」
「あの方はお一人で探索とのこと。まったく、人間などのどこに興味など持てようか。あんな野蛮な者どもの…。それに立場もお有りだというのに…他の人間に見つかったら如何されるおつもりだろうか?」
大鳥は、舌舐めずりをしながら異形の相手に言う。
「マアマア。俺ハ食糧ヲ捕マエテ来タ。高貴ナアノ方ニハ、少々申シ訳無イガ…ウマソウダロウ?」
何を言っているのかは良く分からなくとも、幼いマリーはとても嫌な予感がした。
しかし空を飛んだ負担と感じたことのない恐ろしさに体はすくみ、口はきけずまだ立ち上がることもできない。
「なんだこの食い物は。鬼族に先日生まれた息子に、なんだか似ているじゃないか。俺は見たことがないが、これは人間の子供ではないのか?」
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