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愛する息子へ
ねぇ、覚えてる?
君が書いたこの作文。
久しぶりに取り出して読んでみたの。
「ゴールデンウィークの最初の日、母が入院した。『もう絶対に大丈夫』と言っていたのに、2度目の入院だった。
それから2週間。今朝また、救急車で別の病院に運ばれた。
そして午後8時、手術の末、弟が生まれたと連絡があった。予定日より2ヶ月早く生まれた弟は、1318gだった。超低体重児というらしい。
お腹から取り出された時、弟は泣かなかった。でもしばらくして、突然大きな声で泣き出した。
『だからもう大丈夫。大きくなるよ。』
と父が言った。
弟の名前は、父と僕から1文字ずつ取ってみんなで考えた名前だ。だから僕は弟を大事にしようと思う。
本当に生まれるはずの日が来たら、弟は退院できるらしい。その日が楽しみだ。」
あれから10年の年月が経った。
君の弟は、あの時の君と同じ、10歳になった。皆んなに愛されて、すくすく成長した末っ子は、天真爛漫な甘えたさんに育った。身長だって、あと数年でお母さんを超えていくだろう。
「ひょっとしたら君の高い身長だって、超えていくかもしれないよ?」
そう言ったら君は
「ハハハ! まさか」
と鼻で笑うけど。でもお母さんはそんな未来もちょっと楽しみにしてるの。
そんな君は、もうすぐ、二十歳の誕生日を迎える。あの時書いた作文の通り、弟を大切にしてくれたね。ありがとう。優しい君は、お母さんの自慢の息子だよ。
愛する息子へ
母より
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