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二人は大学の最寄り駅へと向かい、自転車を探した。しかし、数千台はあると思われる自転車の中からピンポイントで自分の自転車を探すことは骨が折れる。ざっと見て回り発見けられず、盗難届を出しに駅前の交番へ行くことにした。
二人が自転車置き場を歩いていると、遥か遠くより ピーポーピーポー と、言ったサイレンが聞こえてきた。
「穏やかじゃねぇな? ネズミ捕りか?」と、青年。すかさず友人は首を横に振った。
「違う。救急車の音だよ」
「おまえ、よく分かるな」
「車乗ることが多いと、サイレンの区別もつくってものよ。パトカーは『うぅ~ うぅ~』で消防車は『う~ う~ う~ カンカンカン』って警鐘つきだ。救急車は今聞いた通りの『ピーポーピーポー』だ」
青年が交番の前に立つと、交番は蛻の殻であった。ポツンと置かれていた机の上には立て看板が一枚。
只今、警察官は所外活動中で不在です。お急ぎの方は受話器を上げて警察署の方にご連絡下さい。
急ぎではないが、帰るのが遅くなっては家の者に迷惑がかかる。青年はさっさと盗難届を書くために警察官を呼び出すことにした。受話器を上げて応対した警察官に事情を説明すると、五分もしないうちに群青色の制服を纏った警察学校を卒業したばかりと思しき警察官が交番へと戻ってきた。
「いやぁ、すいませんね。交通事故の見聞に出てまして。えっと、自転車の盗難の方でよろしかったでしょうか」
「あ、はい」
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