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今、敦之さんの腕の中。
「雪隆、車を出せ」
「はいっ。病院へ向かいますか?」
ほら、敦之さんの声がする。それから、雪隆さん? かな。いつもの雪隆さんじゃないみたい。声が慌ててる。
「いや。平気だ。拓馬が落ち着いたら知り合いの医者を呼ぶ。とりあえずうちへ向かってくれ」
「かしこまりました」
「あ……つ、ゆき……さ」
「拓馬?」
「あ、の」
俺、トイレにいたはず。
「さっき」
気持ち悪かったんだ。知らない手に触られて身体はひどく反応してるのに気持ちは全く違っているから、気持ち悪くて吐きそうだった。手首を持たれていたけれどそこがジリジリ焼け焦げていくような、やけどが爛れて膿んで腐ってしまいそうな。
「拓馬」
「あ……やぁ」
なのに、敦之さんに触られると全然違う。心配そうに頬を撫でてくれる手にさえ感じてしまう。まるで猫が撫でられたい一心で頭を主に摺り寄せるみたいに首を傾げて、甘ったるい鳴き声で必死に媚びてしまう。
「……ン、気持ちぃ」
ゾクゾクする。腰の辺りがじんじんして、奥のところ、お腹の奥のところが、じゅくりと切なさそうに潤んでく。
「あ、やだ……敦之さん」
それをわかってるみたいに敦之さんの手が下腹部を撫でた。今そんなところ触られるのはたまらなく恥ずかしいんだ。濡れてしまっているから。なのに、ダメと抗ってるとはいえない手つきでその腕にしがみついてしまう。
さっき雪隆さんがいた気がする。なのに、こんな、俺、今。
「大丈夫」
「待っ」
擦られたら、ダメ。
「平気だ。少し楽になろう。力を抜いて」
「や、ぁ……」
「うちに帰るまでは」
「っ」
「手にしがみついて」
ふわりと頭からすっぽり敦之さんがジャケットで覆ってくれた。
「っ……ン」
包み込まれるように彼の懐に隠れて。敦之さんの匂いで達した。たったそれだけで気持ち良かった。
「上手だね……」
「……あ」
「続きはうちでしよう」
嘘みたい。
「早く……敦之、さん」
さっきは気持ち悪くてたまらなかった。吐いてしまうかと思ったくらい。勝手に発情させられた身体が拒否して暴れて仕方なかったのに。
「続き……」
敦之さんの唇が髪に触れると、ただそれだけでも身震いするほど気持ち良かった。
歩く足元がおぼつかなかった。
彼に支えていてもらわないとその場に崩れ落ちてしまいそうだった。でも支えてくれる腕の力強さにさえ酔ってしまうほど。
でも――。
「拓馬、少し水を飲んだほうがいい。拓馬?」
でも、うちに帰ると、よろけながら壁伝いに歩いて一番に洗面所へと向かった。手、を……。
「拓馬? どうし……」
手を洗わないと。
じゃないと。
「さっき、の、人に手を掴まれた、から」
振りほどけなかったんだ。力が入らなくて、そのままトイレに連れ込まれるところだった。
「洗わないと。でも、ここ、だけ、です。他は触られて、ない、からっ……だから、触っ」
その手首を敦之さんが掴むと、いとも簡単に俺を抱きかかえ、洗面台の上に座らせた。
「ン……ん、ふ」
深いキスに眩暈がする。そのまま敦之さんのもう片方の手が俺のスラックスのベルトを外して。
「! や、だ、見たら、やら……」
濡れてるの。
そこ。敦之さんの手に擦り付けながらさっきイッてしまった。まだ何も綺麗にしていないのに、ぐしょぐしょのそこを見られてしまった。すごくすごく恥ずかしくて、そこを手で覆い隠そうとしたけれど、洗って濡れたままの手首を両方とも掴まれて、手で覆って隠せなかった。
「車の中でイったから、濡れてる」
「あっ……触ったら、やぁ、んんんっ」
舌を絡められながら吸われて、角度を変えてもっと深く濃厚に唾液が溢れるような激しいキスに、舌先は痺れていく。なのに、口の中は濡れて、重なる唇の隙間から伝い零れる唾液にさえ感じて、また小さく。
「また、イッた?」
「……ぁ」
俯くと今度は耳にキスをされて腕の中で溶けそうになる。
「たくさんイッていいよ」
「あ、あ、あ、俺、敦之さんだから、こんな、さっきは、俺っ」
違うの。さっきまではこんなじゃなかったの。
「わかってる」
気づいたら泣いてた。でも、涙は敦之さんの唇が拭ってくれた。
「あまり可愛いことを言わないように」
「ン」
「それでなくても君が他の男にどうにかされそうなのを見て、今、拓馬を優しく抱ける自信がないから」
「あ……」
「だから」
「優しく、なくていい……です」
綺麗な敦之さんの手をぎゅっと両手で掴んだ。
「さっき、まで気持ち悪かった。手首を掴まれた時も。本当に。でも……今は、敦之さんなら、ゾクゾクする」
「……」
「ひ、どく……してかまわない、ので」
舌先が痺れてる。指先の感度が鈍い。それでも、欲しくて、欲しくて、たまらないから誘うようにその手を掴んで、まだほぐしてもいないのに柔らかくなっている孔に触れさせた。
「ん、あっ」
入ってくる瞬間にまた小さく達した。
「敦之さんにたくさん、されたい」
この手ならこんなに気持ちいい。指をずぷぷと中に招き入れながら、また前から熱が溢れてとろりと出た。
「たくさん、イッたんです」
「……」
「でも、貴方でしかイってない」
この人の匂いならこんなに興奮する。ほら、スンと鼻を鳴らして、貴方のうなじにキスをしただけで、中が指に絡みついたでしょう?
「本当です」
「……」
「ン、あっ……触られただけでイっちゃう」
この人となら、こんなに自分から指を挿入させて、激しく中を噛み混ぜて、はしたなく乱れられる。
「お願い。さっきの続き、して、欲しい」
貴方でだけイくって見せるから、早くこの身体をめちゃくちゃにして欲しいと舌先を伸ばして、キスをした。しながら身体をもっとはしたなく大胆に冷たい大理石の台座の上で開いてみせた。
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