月光と怪物

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 私は眠る千堂さんを見た。初めて聞く寝息は安らかで、まるで遠い国から聞こえる新しい音楽のようだった。  私は眠る千堂さんに別れを告げた。そしてバスに乗った。家に向かって、バスは走り出した。  学校のある町が、千堂さんのいる町が遠ざかっていく。  忘れろ。  思い出すな。  道が悪くて、バスは何度か揺れた。揺さぶられて、涙が、まぶたをこじ開けるようににじみ、あふれた。 おわり
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