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私は自分でもびっくりするくらい赤面した。千堂さんに初めて話しかけて、しかも間違う。それも推し関係で。したがって、推しもばれる。こんな恥ずかしいことがあるだろうか。
「あ、ありがとうございます……」
色々落胆してすごすごとコンビニから逃げた。
すると翌日。放課後コンビニの近くまで来たところで、千堂さんがコンビニから出てきた。「おーい」と手を振る。おいで、おいでする。
呼ばれるまま近づくと、
「始まりましたよ。めっちゃ人気だから、早めに買った方がいいですよ」
と言ってくれた。
確かに「ゲットくじ」の周りには、女の子の人だかりができている。言われるがまま、私は「ゲットくじ」を購入した。
「……あ」
第一希望の推しのぬいぐるみだった。
「あ、やば、やばい」
本当に欲しかったので、千堂さんの前であっても愛があふれ出てしまう。
「よかったですね」
やわらかいタオルのような声がして、見上げると千堂さんが笑っていた。
「あ、あの……ありがとうございました」
「いーえ。ありがとうございました」
それで千堂さんは接客に戻った。
千堂さんは、いい人である。
気遣いができるし、いつも笑顔だ。
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