月光と怪物

7/14
前へ
/14ページ
次へ
「あ、あっ……こんにちは」 「こんにちは。いや、てかこんばんは、か」  まだ外は明るいが、午後七時を回っていた。 「これから、バイトですか?」 「いや? 今日はこれで終わり。結構イレギュラーなシフトなの。そっちこそ今日は遅いね?」 「あ、学校で、残ってて」 「そう。休みなのかなって思ってた」  一緒にコンビニを出た。 「見て」 「……あ、月」  満月だ。  満月は怪物の目のように赤かった。 「スーパームーン」  千堂さんが言った。 「スーパームーン、って、魔力高そうだよね」 「あ。私も。怪物みたいって思ってました」  そのまま近くの公園まで行って、しばらく月見をした。公園には天体ショーを楽しむ親子連れが、何組かいた。 「そうだ。名前、何ていうの」  月の下で見る千堂さんの黒髪は、乱雑で艶めいて、まるで悪い天使のようだった。 「るな。野本るな」  あえて名字も伝えてみた。千堂さんの表情は、特に変わらないように見えた。 「るなちゃん」  冷たくなった手をさするように、千堂さんは言った。 「月のきれいな夜に、生まれたの?」 「え?」 「ルナって、月っていう意味だから。フランス語では」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加