16人が本棚に入れています
本棚に追加
遅くなるけれど親には、友達の家で受験勉強とか何とか言ってごまかした。もうすぐ高校生になるので、門限とかそこらへんのことは、親はどうでもよくなっているらしい。
けれど姉は、どうだろう。気づいているかもしれない。千堂さんの水曜の夜は、それまでは姉のものであったはずだから。
「ねえ水曜日、何してんの」
唐突に姉からそう聞かれた。
「……勉強」
普通に言えただろうか。体の奥から熱が込み上げてくる。
「ふうん。勉強」
姉はどういう意味か分からないけれど、にやにやしていた。
「勉強ねえ。……あのさ。今スマホって便利なんだよ。登録してたら、相手の位置情報とか分かっちゃうの」
「……え、そうなの?」
心臓が大きく波打つ。
それはつまり。
「……公園で二時間も三時間も勉強できちゃうかな〜……」
にやにやしながら、姉はぱたんとドアを閉めた。まるで囚人への尋問を終えた、刑務官のように。
頭が、ぐらぐらする。
やっぱり、私は罪を犯したのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!