月光と怪物

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 遅くなるけれど親には、友達の家で受験勉強とか何とか言ってごまかした。もうすぐ高校生になるので、門限とかそこらへんのことは、親はどうでもよくなっているらしい。  けれど姉は、どうだろう。気づいているかもしれない。千堂さんの水曜の夜は、それまでは姉のものであったはずだから。 「ねえ水曜日、何してんの」  唐突に姉からそう聞かれた。 「……勉強」  普通に言えただろうか。体の奥から熱が込み上げてくる。 「ふうん。勉強」  姉はどういう意味か分からないけれど、にやにやしていた。 「勉強ねえ。……あのさ。今スマホって便利なんだよ。登録してたら、相手の位置情報とか分かっちゃうの」 「……え、そうなの?」  心臓が大きく波打つ。  それはつまり。 「……公園で二時間も三時間も勉強できちゃうかな〜……」  にやにやしながら、姉はぱたんとドアを閉めた。まるで囚人への尋問を終えた、刑務官のように。  頭が、ぐらぐらする。  やっぱり、私は罪を犯したのだろうか。
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