終わった恋とはじまる愛

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「ねぇ、覚えてる?」と言った私に、彼はすぐにニヤリとしてもちろん!と即答した。 ーそうだった。私は彼のこういう所が好きだったんだ。 終わったはずの恋に出会ったのは、はじまった愛に不安を感じていた時。大学時代の悪友に他の友人にドタキャンされチケットが余っていて、一人では参加できないからどうしてもと頼み込まれた婚活パーティーへ軽い気持ちで参加してしまったあの夜のこと。 大学時代からの悪友は、楽しそうに男性と話をしている。否、私も横にいる男性と談笑しているわけだがさっきから話が全く噛み合わなくて、うっすらと笑いを貼りつけて頷きを続けている私にとっては苦痛の時間以外の何者ではないことは確かだった。 やっぱり来るべきではなかったのだと思いながら横に座る某有名私立大学をでたエリート商社マンの話を右から左へと受け流して早く時間が過ぎることをただひたすらに時計をチラリと見ながら、携帯の着信がないことに悲しさを感じつつも心の中ではどこか安堵をしていたのかもしれない。彼は今日は朝からゴルフだと言っていたし、私も大学の友人とご飯だと言ってある。 やっと、エリート商社マンから解放されて、最後の組になった。席指定じゃなくて立食式と言われて連れてこられた私は最初から不機嫌モード。こんな女の横になる男性には申し訳ないが、ニコニコと笑って話に相槌をうつのが私にできる最大限の譲歩で、そんな調子だから受付でもらった気になりますカード(正式名称は失念)を渡してくる人は今のところゼロ。 もらっても連絡を取るつもりもなければ次に繋げようという想いのカケラもないのがやはり伝わってしまっているのだろうか? とりあえずご飯が美味しいのだけが救いであるため、さよならの挨拶もそこそこに私はクラッカーに手を伸ばしてクリームチーズをのせて口元へ運んだ。 口の中の水分が吸い取られて、クリームチーズの濃厚な味が口の中へ広がる。そこにワインを流し込めば次にやってきた人物をみて思いっきり咳込むことになることをこの時に私は知る由もなかった。
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