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その強い視線は、ヒロ君から向けられてるもので小さくため息をついてからその視線に向き合った。
「さっきの返事まだもらってないんだけど、今日もらえるのかな?」
さっきの返事というのは多分、もしもの話。もし、別れずに結婚していたらと言うもの。
「もしも、なんて仮の話。なんの意味もないよ」
「それでも俺はお前の口からちゃんと聞きたい」
「そういう未来もあったかもしれない。けど、私達は結局別の未来を選んだ。それが答えよ。かもしれない未来は、あったという事実の過去なんだから」
そう言えば、ヒロ君はフッと私が好きだった笑い方で笑った。
「たしかにそうだな。昔からそうだった、お前は欲しがり無さすぎなんだよ。もっと欲しがればいいのに。気づけよ、愛されてること。」
そうだねと返事をしてから席を立った。突然立ち上がった私に驚いた前のふたりがどうした?とこちらを向いた。
「ごめん。私、帰らなきゃ、ごめんね」
そう言って、カバンを引ったくるようにしてその場を駆け出した。
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