終わった恋とはじまる愛

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「いつぶりぐらいだ?」 「別れたのは大学生だからもう5、6年くらいじゃないかしら?」 「そうか、そんなに経ってるんだな。まぁ、俺の子供ももうすぐ2歳になるからそうだよな」 しれっと結婚し、子供がいることを伝えて来た彼に、私は少しだけ胸がチクリと痛んだ。今日は何、冷やかしそれとも本気なの?なんて子供じみた意地悪な質問をしてしまう私も性格が悪いんだけど。彼はその言葉に隠された気持ちを知らずか、または知っていてあえてなのかわからないけれど冷やかし、あのバカの付き添いだよとため息を呟くように呟いた。 話が途切れたタイミングでワインを持って来てくれたスタッフにお礼をいって受け取り、彼が持っているロックグラスに合わせた。 「とりあえず出会いに乾杯。」 「お、そんな風に思ってくれてたんだ。乾杯」 今度は私がため息をつく。味わい損ねたクラッカーにもう一度手を伸ばして、反対側に座っている私の悪友と彼の悪友を眺める。何がそんなに面白くて笑っているのか分からないけれど二人は楽しそうにしていた。なんなら彼女は今までで一番素に近い笑いを見せている。うまくいけばいいなと思いながら前の二人を見つめていれば横から彼の声が聞こえて来た。 「ユミはどうなの?いるの?」 「まぁね、一応。婚約者みたいな形かな?今は」 顔を向けることなく話す私に、彼は顔を見て話すのを諦めたのかソファーへ倒れて深く座り込む。おかげで私はこの背に付けれない状態をキープしなければならなくなり、ソファーの肘掛けに肘をついて頬付けを付いた。
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