26人が本棚に入れています
本棚に追加
そこから私はずっと彼氏と呼べる人ができずにいた。社会人になって出会いの場はなくなり(入社した会社は社内恋愛禁止という社訓があるほど厳しい所だった)年齢的にもそろそろパートナーをと思っていた頃に出会ったのが今の婚約者である。付き合って1年半ほど経った頃(出会って2年目だったが)婚約者として親に紹介したいんだと言われてそのままズルズルと今の関係が続いている。
「なぁ。もしもって考えたりするか?俺たちが別れずに、結婚してたらとかさ。」
裏返しにて置いてあった携帯がぶぶっと振動をたてた。それは短くなんども繰り返されたことで電話だと気づいたのはしばらくしてからだった。ちょっとごめんと断りを入れてからディスプレイに表示された名前を見ることなくスライドさせて耳に当ててお店の入り口少し静かなところへとむかって歩いた。
「もしもし?」
「あ、もしもし。ごめん邪魔しちゃった?」
「大丈夫だよごめんね出るの遅くなって友達にちゃかされちゃってさ」
電話の向こうの彼のはははと笑う声の後に後ろから口笛やなんだかよく分からないヤジが飛んでいた。
「いや。こっちもガヤがうるさくて悪い、もうすぐ帰れそうなんだけど今日これから少し時間ある?」
「あ、私の方は大丈夫だけど、リョウの方は大丈夫なの?いつもゴルフの時は深夜帰りだって言ってたじゃん?」
最初のコメントを投稿しよう!