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親戚たちが帰って、リビングには燈と父の哲男が残った。燈の娘、郁海は友だちとオンラインで何かをすると言って二階に引き上げて行った。ふたりでビールを開けた。やっと一息つけた。長い一日だった。
「俺、あいつに謝ってないんだよなあ」
「あいつって、晄に?」
「そう」
「何を?」
「高校生の時ひとりで夜中に自転車でコンビニに行かせたこと」
「ああ、あれね。あれはあたしも反省してんだ」
「なんでおまえが?」
「だって、あの子、姉のあたしに頼れなかったのよ。ナプキン一枚貸してって言えない姉なんだなって、悲しくなっちゃった」
「言ってくれりゃあ、俺だって、そんなに行きたきゃ自転車で行け!なんて怒鳴らなかったんだ」
「本当に行ったからね、あの子。真冬だったのに」
「三キロはあるからな。可哀そうなことをしたよ」
「あたしがトイレで見つけなかったら、あの子ずっと黙ってるつもりだったのよ。ふだん好き放題してるくせに、変なところで気をつかうんだから」
「母さんが生きてたら、こういうことにはならなかったってな。つくづく思ったよ」
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