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手鏡で確認すると、
「うん、嘘」
と、穂高君は表情ひとつ変えずに言った。
邪魔をするつもりなら、早く帰ってほしい。
「やっぱり持ち帰ってるんだ。いくら仕事できるとはいえ、抱えすぎじゃないですか? 振り分ける能力も実力のうちですよ?」
「んー、振り分けてるよ? けっこう」
「俺にはきてない」
「だって、穂高君もけっこう抱えてるじゃない」
そう言うと、穂高君は中嶋ちゃんの椅子でクルンクルンと半回転を繰り返す。
「まぁ、わかりますけどね、その気持ち」
「え?」
聞き返すも、穂高君は伸びをして立ち上がる。そして、どこかへ消えたかと思うと、カップのコーヒーをふたつ持ってきて、デスクに置いた。
「ありがとう。でも、つきあわなくていいよ」
「気が散るから?」
「そう」
「ひど」
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