35歳の迷子たち

５

　たしかに昨夜も遅くまで確認作業をしていたし、今日は朝から排卵痛もあって、体調が万全かと言われるとノーだ。

　けれど、この緊張感の中で全うする仕事の達成感を思えば、頑張れる。上層部のおっさんたちのセクハラにも耐えられるのだ。

「あれ？」　
　手に持っていたクリアファイルの中の資料の合間に、小さな付箋を見つける。いつのものだろうか、これは“がんばって”と書かれたパンダのスタンプが押された付箋だ。

　紛れ込んでいたのだろうけど、そのゆるいキャラクターの顔に、私はふっと肩の力を抜いてもらったような気がした。

「様々な価値観やライフスタイルが認められるようになり、その多様化に伴って、健康意識も個人でかなり違いがみられるようになってきました」

　プレゼンは、スムーズに始まった。お偉いさんや取引先が座る後ろのほう、ライフ部も社員もたくさん見に来ている。