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「弊社では、それぞれのニーズに応えられる、バラエティー豊かな商品、サービスが必要だと考えております」  うん、みんな耳を傾けてくれている。スライド環境の調子もばっちり。このまま滞りなくいけるはず。 「選ぶことができる、というそのことが価値を高め……」  ところが、体調の異変は急にやってきた。腹部の鈍痛が、切り裂かれるような鋭いものに変わったのだ。  ……あれ? お腹、痛い。  鎮痛剤飲むのが早すぎて、切れちゃったかな。それに、なんだか胃のあたりもムカムカするような……。 「ですから、今後、いっそう……」  終わるまでは顔に出したらダメだ。大丈夫、今までもこんな状況は腐るほどあった。仕事をする責任ある人間としてそのたびに乗り越えてきたし、それで得られる信用信頼は確固たるものだ。今日だって、乗り切れる。 「いっそう……」  そう思うと同時に目の前がふっと暗転しかけ、私は説明を追えぬままスライドボタンを押してしまった。眩暈だ。次いで、容赦なく襲ってきた吐き気。
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