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「あの……」  スライドと資料に向けられていた視線が、言葉に詰まった私へと集中し始める。大丈夫、大丈夫だという自己暗示が、冷や汗となってこめかみを伝い、顎から落ちた。 「う……」  ……無理だ。  体感で悟った私を追い込むように、またもや強烈な吐き気と眩暈が襲う。ここで気を失うわけにはいかないし、吐くわけにもいかない。  途中退席とどちらがマシか、瞬時にそれらを秤にかけた私は、 「失礼します」  と口を押さえてかろうじて頭を下げ、席を外した。  ざわざわとした会議室。その微妙な空気の間を縫い、倒れるなら廊下だと、狭くなる視界のなか必死にドアノブに手をかける。  手を……。  そこで、私の意識は飛んでしまった。  
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