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「平野さん」
昼食後、社長室にお茶を届けた私を、社長が呼び止めた。
「はい」
返事をすると社長と目が合った。
「明日の土曜って、何か予定あるかな?」
明日?
なんだろう?
休日出勤なんて今まで頼まれたことはない。
「いえ、特にありませんけど……」
真っ直ぐにこちらを見る社長の視線に、私は、恥ずかしくなって思わず目を伏せた。
「来週、娘の誕生日なんだけど、何を買っていいのか分からなくて……。もし良ければ付き合ってもらえないだろうか?」
娘さん?
確か、真由美社長の連れ子で社長とは血の繋がりがなかったはず。
それでも、社長が子煩悩だというのは、周知の事実だ。
「私なんかでいいんですか?」
なんか、場違いな気もするけど。
「娘はもう18になるからね。父親と買い物なんて行ってくれないし、妻は……まぁ、誘っても来ないしね」
あぁ! そういうことか。
「分かりました。お役に立てるかどうか分かりませんけど、私なんかで良ければお付き合いしますよ」
少し困った表情の社長がかわいくて、思わず笑みがこぼれる。
私よりも2つも年上ののおじさんをかわいいって思うのは変かもしれないけど。
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