鏡よ鏡

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 美の研究所内にある病室を出て、わたしは久しぶりに屋敷に戻った。  AI鏡の前に立つ。鏡の中には二十歳のわたしが映っている。  そう、わたしは娘の体をもらったのだ。娘の脳を取り出して、代わりにわたしの脳を入れたのだ。酷いことをすると思うだろうが、娘はわたしのクローンなので、娘もわたしなのだ。二人いたわたしが元通りの一人になっただけだ。  美術作品は時を経ても美しくなければならない。人間だって同じことだ。美しい人は老いることなく、いつまでも美しくなければならない。美術作品には修復と言う作業がある。わたしがやったのは若い体に乗り換えるという修復作業なのだ。  美の研究所にある人工子宮では、わたしのクローンが育っている。  やがて娘が生まれ、大きくなればわたしの美しさを継いでくれるはずだ。  わたしはAI鏡に聞いた。 「鏡よ鏡、わたしの美しさはどれぐらい?」
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