鏡よ鏡

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「鏡よ鏡、わたしの美しさはどれぐらい?」  わたしはAI鏡に聞いた。 「あなたの美しさはレベルSブラスです」  AI鏡が答える。  レベルSプラスか……最高レベルの美しさだ。鏡の中で女の顔が満足そうに微笑んでいる。  自分が美しく生まれたからだろうか、わたしは美に執着した。どれほどの美人であるか知りたかった。幸いにも莫大な親の遺産が残されたので、才能ある研究者、技術者を集めて、屋敷の敷地内に美の研究所を設立した。  研究者たちは美人の条件を研究した。歴史上の美人、絵画の美人、スクリーンの美人、そして現在――二千六十X年――の美人たちのデータを駆使して美人の条件を確立した。その結果できたのがAI鏡だ。  AI鏡は人の美しさを測定することができる。詳しい原理は分からないけれど、顔の各パーツの大きさだとか、顔の輪郭が黄金比や白銀比という比になっているのかとか、皺の数や皮膚の張り具合などから、美しさのレベルを判定していると聞いた。  もちろん現代の医学では、整形手術でどのような美人にでもなれる。しかし、所詮作り物の美しさだ。人工ダイヤは天然ダイヤにかなわない。AI鏡は偽物の美しさなど見破ってしまうのだ。
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