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あらかじめ決めていた手はずどおり、播磨はホンダ・アクティの運転席にもぐり込んだ。ホンダは軽やかなエンジンの唸りを上げた。しかしヘッドライトは消えたままだ。 「行くぞ」 俺と三木は拳銃を握り締めながら身を引くして迅速に動いた。前方二百メートル先では中国人のベンツとヤクザのレクサスが向かい合わせになって止まり、互いにヘッドライトをハイビームにして威嚇し合っている。二台の高級車の中間では双方四人ずつ合わせて八人の後ろ暗い背景を背負った男たちが向かい合わせなり、違法薬物の取り引きを始めつつあった。 俺と三木は上から下まで濃紺色の衣服に身を包んでいる。毛髪はやはり紺色のニット帽で隠してある。顔面は下半分を黒いマスクで隠してあるが、目の部分は黄色いレンズのサングラスで覆ってある。黄色いレンズは暗闇でも対象物を鮮明に捉えることができる。 八人の悪党たちは双方の車両のハイビームに幻惑されているせいか、暗闇から急接近する俺たちにまるで気づいてもいない。
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