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俺と三木は八人の悪玉たちに再接近し、揃って声を張り上げた。「動くな!」
「下手に動いたら死ぬぞ!」
俺は威嚇のために、星空へ向けてグロックを発砲した。これはまた、播磨への合図でもあった。俺たちの二百メートル後方ではホンダ・アクティが無灯火のまま発進。ゆっくりと接近し始めた。
中国人たちは俺を一斉に指差し、なんとも聞き取りにくい酷い日本語でヤクザたちに向けてわめき散らしている。
白背広に身を包んだスキンヘッドの幹部らしきヤクザは中国人たちには見向きもせずに、俺と三木を順番に見据えた。
「この野郎」
白背広はギョロ目を細めながら、いかにも忌々しげに歯ぎしりした。
「てめえら何者だ」
「さあな。名乗るほどの者でもない。それより、カネをこっちに渡してもらおうか」
「自分が何をやらかしてるかわかってるんだろうな?」
白背広は手下を向いて、顎で指図した。手下は頷いて、スポーツバッグを放り投げた。スポーツバッグは重たい音を立ててヤクザたちと俺の中間に転がった。それに三木が駆け寄って拾い上げた。
中国人がわけのわからない言葉で怒鳴り始めた。今度はさっきと違って、おそらく中国語だろう。言葉はわからずとも、彼らが言いたいことは俺にもだいたいわかる。中国人たちは自分らが持参した商品である白い粉を「絶対に持って帰る。取り引きは中止だ」と彼らなりの言い方でヤクザたちに捲し立てている。
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