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「俺たちが欲しいのは現金だけだ。白い粉なんか欲しくもない。というわけでそこで偉そうに突っ立ってるヤクザの旦那、三國志のみなさん方に今日の取り引きはおしまいだから宝物を持って中国に帰れと言ってあげてくださいよ」
俺は言ってから、銃身の先で白背広を急き立てた。「ほら、早くしな」
「よくよく死にてえらしいな」
白背広はギョロ目を見開いて俺を真っ直ぐ睨み、「てめえのことは絶対に忘れねえぞ」と唸った。それから白背広は中国人たちに向き直り、日本語混じりの身振り手振りの怪しい中国語で何やら捲し立てた。中国人たちは口汚く罵りながらベンツに乗って去っていった。それと同時に播磨が運転するホンダの軽ワンボックスが俺たちの真横に音もなく停止した。
手はずどおり、播磨はホンダ・アクティのヘッドライトを唐突に点灯した。ヤクザたちは眩しさに目を細めた。俺はその隙を突いてグロックを発砲し、ヤクザたちのレクサスのタイヤを撃ち抜いた。ヤクザたちは咄嗟に身を屈めた。ヤクザのひとりが懐から拳銃を取り出した。俺はそいつの肩先を撃ち抜いてやった。そいつは悲鳴を上げてうずくまり、手足をもがれた虫のようにのたうち回った。
「だから下手に動くなと言ったろう。こういうのを自業自得って言うんだ」
俺は立ちすくむヤクザたちに銃口を向けたままホンダの後部座席に滑り込んだ。三木は笑いながら助手席に飛び込んだ。
「あばよ、暴力団の旦那方」
スライドドアを閉じると同時にホンダ・アクティはタイヤを鳴らして急発進した。背後から銃声が連続して轟き、銃弾が雨霰と降り注いだ。振り向いてみると、鬼の形相のヤクザたちが自分の足で走って追いかけながら雄叫びを上げ、それぞれが手にした拳銃を撃ちまくっている。
後ろの窓ガラスが砕け散って月明かりを反射して七色に輝いた。俺は割れた窓ガラスから銃を突き出し、狙いもつけずに盲射した。 すぐに射程圏内から外れ、ヤクザたちの銃弾は俺たちに届かなくなった。
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