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「やったな。現ナマ一億円だよ」 三木は「うひょー!」とすっとんきょうな声を上げた。戦利品の配分は既に三人で決めてある。儲け話を嗅ぎつけて段取りをつけた播磨が四千万円。ガンマンである俺と三木はそれぞれ三千万円だ。俺たちの世界では腕っぷしの強さや拳銃さばきの上手さよりも儲け話を察知して具体的な段取りをつける能力こそが最重視される。要は頭の良さがすべてだった。そして頭の良さにかけては、今回の作戦をお膳立てした播磨が断トツだった。 「三木、現ナマを南雲(なぐも)にも見せてやれよ」 ハンドルを握った播磨が楽しげな鼻歌混じりにさりげなく言った。三木は「おう、そうだな」と頷いてスポーツバッグを後部座席に放り投げた。「ほら、南雲ちゃん。見ろよ一億円だあ!」 俺は十キロの重さのそれを両手で受け止め、なんとも言えぬ達成感に心地よく酔いしれた。 ホンダ・アクティは全長が数キロにも及ぶアーチ状の大橋のほぼ真上に差し掛かっていた。眼下には月明かりにさざめく太平洋が拡がっていた。辺りには並走する車両の一台もない。無論、レクサスのタイヤを撃ち抜かれたヤクザたちは岸壁で足留めを食らったままだ。俺たちは三人とも面が割れていないから、目立たず静かにしていれば安全だった。それにヤクザたちが警察に被害を訴える可能性も皆無だ。連中は被害を公にはできない。もっとも、ヤクザたちは組の人員を総動員して、奪われたカネを血眼になって探しはするだろうが、肝心のカネは見つかるはずがない。ヤクザ連中が万にひとつでも俺たちの身元を暴けたとしても、そのときにはすでに俺たちは国内にいない。物価の安いどこかの国で召し使いや琥珀色の肌をした美女たちに囲まれ、白亜の豪邸の中庭でバーベキューグリルを囲んで高笑いしている。
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