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美女の水着の布地の色を想像しながらほくそ笑んでいた俺は、ふいに現実に引き戻された。アクティが急ブレーキで前のめりになりながら大橋の頂上で停まったのだ。俺は運転席の背もたれに顔面をぶつけた挙げ句に座席と座席の間に転げ落ちてしまった。シートベルトの装着を怠っていたのが災いした。 「どうした?」 身体を起こしながら運転席と助手席の背もたれの間に身を乗り出した。 「人を轢いちまったかも知れない」 播磨が青ざめた顔を強ばらせていた。 「嘘だろ。こんな夜中になんだってまた大橋の真ん中を人が歩いてるんだよ」 「知るかよ。若い女だ。おい、三木。おまえちょっと様子を見てきてくんねえか」 「よっしゃ。わかった」 三木はダッシュボードに拳銃を置いてから車外に降り立った。 「おーい、大丈夫ですか?」 三木の切羽詰まった声が聞こえる。その瞬間、若い女が猛然と跳ね起きるのが見えた。ミニスカートと派手な上着が夜風に翻る様がヘッドライトの灯りに白く浮かび上がった。 「え? ちょっと!」 三木はわけがわからないといった顔で立ち尽くしている。女がミニスカートの裾をまくり上げた。あらわになった肉感的な太ももに黒いバンドでくくりつけたワルサーPPKの銃把が見えた。女は目にも止まらぬ早業で抜き撃ちの二連射を放ち、一瞬のうちに三木を葬り去った。 「南雲、今度はおまえの番だ」 後ろを振り向いた播磨は顔を薄気味悪く歪めて笑っている。播磨の手には黒光りするベレッタM9があった。急ブレーキの弾みで、俺のグロックはどうやら懐から転がり落ちて座席の下に潜り込んでしまったらしい。もう俺の手の届く範囲にグロックはない。俺は反撃する術を失った。だが、ここでむざむざ野垂れ死にを晒すつもりはなかった。拳骨を握り締めて殴ると見せかけながら、不意を突いて強烈な肘鉄を播磨の顔面に叩きつけた。播磨は顔を背けて鼻血をぶちまけながら果敢にもベレッタを発砲した。 「(いて)えな畜生!」 思わず悪態をついた。 俺の肩先を掠めたパラベラム弾は窓を突き破り、夜空に向かって斜めに跳んだ。肩が火傷したように痛い。もしかしたら、掠めたのではなくて、貫通したのかも知れない。いずれにしても俺は今それを確かめる余裕など持ち合わせていなかった。
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