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◇
「おばあちゃん」
「なあに」
「一人で寝てて、寂しくない」
「そうだねぇ。みんなが会いに来てくれるから、大丈夫よ」
「でも夜は一人で寝ないとだから。お化けくるよ?」
「うふふっ。お化けは怖くないのよ」
「おばあちゃんすごい。いいなぁ。ひよりは怖いよう」
口をとがらせてモジモジする。
娘の口にそっくりな孫娘。
「ママが抱っこしてくれて、大丈夫よって、言ってくれるでしょ?」
「うん」
「それから、オニグラスープ。知ってる?」
「うん。ひより大好き」
「うふふっ。ひよりちゃんはいい子ね。いっぱい食べて、元気になったら負けないから。大丈夫」
「うん」
「手を合わせて?目をつむって、ママやパパのこと考えて」
「こう?」
「そう」
小さな、もちもちした手。見てるだけでしあわせだ。
「どう。見えてきた?」
「うん」
「そしたらオニグラスープは?見える」
「うん。お腹へってきた」
「うふふっ。そうやってすれば、おばあちゃんにも会える。だからおばあちゃんも寂しくないわ」
「うん」
「ひよりー。そろそろ行くよー」
娘を呼ぶ声。
遠巻きに見ていた、すっかり母親らしくなったいのり。ひよりがてくてく、よたよたしながら歩いてく。
「おばあちゃんにちゃんと挨拶できた?」
あの喋り方ったら。私にそっくりだ。
「うん!今日はオニグラスープだって!おばあちゃん。言ってた!」
言ってないし。ほんとちゃっかりしてる。
「えー?おばあちゃん。そんなこと言ってたのー。あははっ」
「うん!」
どうやら我が家の伝統レシピは、ちゃんと受け継がれているらしい。お手軽な秘伝。オニグラスープ。母親の愛情いっぱい満たして。それを吸ったパンみたく、あっという間に大きくなって。
廻れ廻れ。オニグラスープ。
みんなみんな。いっぱい泣いて、いっぱい笑え。
了
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