廻るオニオングラタンスープ

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◇ 私はよく泣く子だった。夜中急に寝ぼけて泣きだすのだという。からかい混じりに母はよくこぼしていた。当の本人としてはそんなことあったかなと、とぼけてはいたが、実はけっこう覚えている。だって恥ずかしいんだもの。 一番古い記憶はたぶん、五、六歳くらいの夜泣き。ビービー泣き疲れたら寝てしまい、再び起きると不機嫌にまた泣き始める。一度火がつくと手がつけられない私に、きっと母は苦労したに違いない。 あれは夢なのか空想だったのか。わからなかったことがある。母は怖い夢でも見たんでしょうと言ってたから、たぶんそうなのだろう。そんな懐かしい記憶。 何不自由なく育てられ、とても幸せで楽しい毎日を送っているはずなのに、ふと思い出したように漠然と不安に襲われて泣くことがあった。 テレビのドラマやニュースの影響なのかもしれない。殺人事件や訃報の映像が頭の隅に残っていて、妄想を膨らませて勝手に悲しくなるのだと思う。 明日が来て、その次の日、そのまた次の日と繰り返すうち、いつかはみんな歳をとって死んでしまう。年長者から順番に。だから私より先に逝くのは母なのだ。大好きな母がいなくなる。いつか必ず別れなければいけない日がやってくる。子供心にそれを悟り、一人残され、大切な人がいなくなっていまう寂しさが、恐怖となってみるみる膨らんでいく。 死んでしまったら悲しいだろう。そしたら私はどうしたらいいのだろう。絶対泣いてしまう。だって今だって泣いてしまうのに──
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