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気がつくと私は母に抱かれている。泣いていた私を見つめる、困ったような、でも優しげな目。その目を見つけた瞬間、安堵の気持ちがぶあっと溢れて涙に変わる。またおいおいと泣いて、私はお願いするのだ。
『ママ死んじゃいや!いなくなっちゃいや!』
母にしがみついて胸元を濡らす。母は私をきつく抱きしめあやしてくれる。
『大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと生きてますよ』
母の腕はとても大きくて広くて、私を包み込んでくれる。ゆりかごのように揺れて、背中をさすられて、とんとんと優しく手当され、私はようやく自分がまだ幼いことを知って安心しながら眠りにつく。
そんな明くる日には、いつも決まってオニグラスープが食卓にのぼる。大きくなってからは落ち込んでいる時、お祝いの時なんかにも。好物の横にはオニグラスープが当たり前のような顔して鎮座している。理由はよくわからないれど、なぜか優しさが伝わる、不思議な特効薬。
当時流した涙は、オニグラスープでできていたと思うぐらい、よく泣いて、よく食べた。
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