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ああ…これが死ぬってことなのか。
呆気ない最期だったな。
こんなクソみたいな人生、とっとと終わらせれば
よかった。
やっとこれで解放される。
大嫌いな世界からも、大嫌いな自分からも───。
『愛ちゃん』
ふいに名前を呼ばれた気がして目を開けたとたんに異変に気づく。
おかしい。
体が浮いている。
慌てて辺りを見渡せばそこはどうやら病室らしく
ここからじゃよく顔が見えないが一人の女と看護師が立っていた。
あたしがこんな状態だって言うのに、その二人は
見向きもしない。
やっぱりあたしは死んだんだろう。
たぶん、この姿は見えてないんだ。
『名前、“愛ちゃん”にしたんですか?』
『ええ。』
よく見ると、女の腕の中には子供の姿が。
生まれたばかりなんだろう、顔は真っ赤だし目は
開いてないしで不思議な生き物に感じた。
これが赤ちゃんなのかと。
『可愛い名前ですね。』
『ふふふ、女の子の名前にしたら一般的かもしれ
ませんけどね。』
そうだ。
あたしはこの名前が死ぬほど嫌いだ。
大嫌いなんだよ。
こんないかにも女らしい名前。
“愛”なんて大それた名前が。
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