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だってあたしはちゃんと愛されてた。   「お母さんっ…!」 写真でしか見たことがなかったお母さんを必死に 呼んだ。 届くはずのない声で。 『愛ちゃん』 お母さんは、腕の中でよく眠ってるまだ小さい あたしの名前を泣きたいくらい優しい声で呼んだ───。 「意識が戻りました!」 うっすらと目を開けて最初に耳に飛び込んできた のは、そんな切羽詰まった声とバタバタとした足音だった。 「愛!」 全身に重りが乗ってるんじゃないかってくらい 重い。 指一本動かせない。 それでも、視界の端に顔をぐしゃぐしゃにして泣きながらあたしの名前を呼ぶジジイの姿が見えた。 「よかったですね。おじいさん。」 「ありがとうございます…ありがとうござい ます………」 頭がもげるんじゃないかってくらい深々と頭を下げて医者に礼を言うジジイを見ながら思う。 あたしは愛されてるんだって───。 この日、ずっと大嫌いだったこの名前をあたしはやっと好きになれた。
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