靴紐になりたい

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靴紐になりたい

お菓子の袋を開けるのが苦手。 制服のネクタイはいつも少し右に曲がっている。 前髪はしっかりとセットされているのに、後ろは寝癖がついたまま。 不器用な君が好きだ。 一生懸命袋を開けようとして中身をぶちまけてしまったり、何度も鏡を見直してネクタイを直す姿、後ろの寝癖には気付かずに満足げに前髪に触れる所を想像するだけで胸の奥がキュッとする。 君の不器用なところを見つけるたびに幸せな気持ちになる。 いちばん好きなのは靴紐の結び方だ。 いつ見ても左右ともりぼんの輪っかの大きさが違うし、斜めになっている。 僕はそんな靴紐を見るたびに靴紐になりたいと思うんだ。 靴紐になって不器用な君の骨張った長い指に触れてもらいたい。何度も何度も結び直して、それでも上手くいかなくて、まぁいいやって小さく息を吐く君を斜めから見上げていたい。 君が歩くたびに揺れて、何かの拍子に引っかかって解けてしまいたい。 そうすれば、また君に触れてもらえるから。 「あ、」 「え?」 「いや、靴紐……解けてるよ。」 「あ、本当だ。もう今日3回目なんだよなー。苦手なんだよ結ぶの……」 「……苦手でいいよ。」 「ん? 何か言った?」 「ううん。何でもない。」 不器用な指が靴紐に触れる。一生懸命に大きさの違う輪っかを作って、ぎゅっと結ぶ。 やっぱりほら、斜めだ。 いいな。 不器用な君が好きだ。 僕は君の靴紐になりたい。 fin
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