私の死体を運ぶ私

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 我が家の駐車場は、自宅の一階がそのまま車庫になっている。死体を誰にも見られず運べるのはありがたいが、いざ車のトランクに私の死体を押し込もうとすれば、なかなか思うようにいかない。頭から押し込めば飛び出た下半身からずるりと外側へ落ちる。全身を一気に待ちあげて入れようとしても、重たくて持ち上がらない。それでもなんとか胴体を無理やり押し込めば、好き勝手放り投げた手足が車のフレームに引っ掛かる始末。だんだん面倒臭くなって、車庫の端に置いてある日曜道具の中から金槌を取ってきて、関節をがんがん叩いて折り曲げた。  無事に全身が収まったことを確認して安堵のため息。トランクの扉を閉めて、車庫のシャッターを手動で開ける。シャッターの向こうに夕暮れに染まったご近所さんの住宅と…脇からこちらを伺う影があった。  「あ、奥さん! さっきお宅から…」  影の正体はお隣さんだ。私の姿を見てほっとして…しかしすぐにぎょっと目を見開いた。  「あらお隣さん、こんな時間にいかがなさいました?」  「い、いえ」  「私、急いでいますの。よろしいでしょうか?」  お隣さんは何度も頷いた。私はそれに満足して踵を返すと車の運転席に座って車を発進させる。  お隣さんが大慌てで自分の家へ帰っていくのが見えた。まったくなにをそんなに慌てているのやら。ふと、バックミラーに映った私の姿が目に入る。顔と言わず服と言わず、全身血でべっとり汚れている。なるほど、だから驚いたのか。なにも驚く必要などないのに。なぜならこれらは全て私の血なのだから。  トランクの中で、ごと、ごんっと私の死体が鳴っていた。
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