EP.2 夢の日のドラマ〜Thanks for the Dream〜

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🎵君の声がする方へ🎵 『あっバーテンさん!何かおすすめはありますか?』 🎵幼い頃誘われて……🎵 カウンター席のカップルの女性 カウンター越しのバーテンダーに声を掛ける 🎵Oh,my dear もうここにいない……🎵 そのバーテンダー 見た目は50代前半くらいの男性―― 🎵言葉で夢と恋を教えられた日々が🎵 白まじりの頭髪と髭がお洒落に整えられ、背筋をピシッと伸ばし、立っているサマは自然と絵になっている 🎵心の奥に今も🎵 『この店のマスターの葉山さんだよ――』 カップルの男性がすかさず解説する 🎵蘇る「Strawberry fields」🎵 『“おすすめ”ですか――そうですね』 マスター 葉山は笑みを浮かべ応対する その姿も紳士的―― 🎵強がりばかりじゃなく🎵 『初めての方にはやっぱり「BLUE HEAVEN」でしょうか――』 🎵ときめく弱さまでいい……🎵 『店の名前と同じですね』 🎵Oh,my star 輝く……🎵 彼女が頷くと―― 🎵星よ🎵 『「BLUE HEAVEN」は、マスターのオリジナルカクテルでさ――カクテルコンクールでも入賞したんだ』 🎵住み慣れた街でたぶん……🎵 またも得意気に解説する彼 🎵忘れられぬLiverpool🎵 『じゃあ~その「BLUE HEAVEN」をひとつお願いします』 🎵突然あの日が来たね……🎵 『かしこまりました』 短い返事のあと きびきびとした動作で後ろの棚を向く 🎵何もかもが「No reply」to me……🎵 『俺はそうだなぁ~たまには“変わったもの”が飲みたいなぁ~』 彼がその一言を発するや否や 🎵夜のとばりに……🎵 葉山は棚のウォッカにかけようとする手をとめた 🎵痛みが走り……🎵 『“変わったもの”……ですか?』 🎵その手の先を一番好きな女性だけに🎵 そう言い振り向きながら、カップルのカウンターの方へ 🎵闇を切る音……🎵 『もしよろしければ――新作があるんですが……どうです?』 🎵彼女の前で……🎵 『え?新作?』 🎵Just with you,baby……もう一度逢いたい……Johnny🎵 『はい。それがですね――実はまだメニューにも正式にのせてないんですよ』 口元を緩ませ目を大きくさせる葉山 とっておきの話題をもったいぶりながら人に話す時の葉山の癖だ 🎵君のいない世界が……🎵 『へぇ~できたてホヤホヤなんですネ』 🎵誰かに汚されないと🎵 嬉しそうな彼女 🎵Oh,my word 今はもう言えない🎵 『まだ正式じゃないので…………サービスでご提供させていただきます』 🎵人が互いのために……🎵 『えぇ~!?ラッキー!……いいんですかぁ♪』 🎵大事にするものが……🎵 『試作品ですので第1号として試飲の意味も含めまして……ね』 🎵大人になるにつれて……🎵 『何ていうカクテルなんです?』 男性がすかさず尋ねる 🎵少しだけ感じる……🎵 『「EMANON」です』 🎵……「Love」🎵 『マスターの新作が飲めるなんてラッキーだな~』 『いえ。実は私のオリジナルじゃないんです…………え~とね……』 店内を首を伸ばし見渡す葉山 やがて 探し人を見つけ その方向に掌を向ける 『――彼女が作るんです』 葉山が示した先に―― テーブルを一生懸命拭いている女性 その女性は―― 『エリ!ちょっと来てくれ』 葉山にそう呼ばれた 『――あ、はい!』 丁寧に受け答える 『へぇ~女性バーテンダーさんかぁ』 『まだ若い……えみと同じくらいじゃないか?』 カップルの視線を浴びながらその女性――エリは小走りにやって来る 『彼女はまだ見習いでして、バーテンダーとしては今日が初めてなんですよ』 そう話しニヤリとする葉山 『ウソ!?バーテンデビュー!?』 『そうなんです――あっ!エリ!オーダー「EMANON」!ヨロシク頼むな』 『え!私がですか!?』 『自分で考えたオリジナルじゃないか――ほかに誰がやるんだ』 そう言って目で合図を送る葉山 『…………分かりました……が、がんばります……』 緊張を抑えながらカウンターに向かう彼女 『ふぅ~~』 とりあえず深呼吸をしてみる 『――――よし』 自分自身に折り合いをつけるかのように―― 冷やしたグラスとシェイカーを用意し ベースのお酒それに合わせる果汁――そして氷 シェイカーの中に丁寧にそれらを流し込んでいく 『…………』 〈シャカシャカシャカ〉 力を入れながら かといって無駄に力を込めすぎず シェイカーを振り出す 〈シャカシャカシャカ〉 『かっこいぃ~』 『なかなかいいね』 その姿は、初めてとは思えないほど堂々としていてカップルも思わず引き込まれてしまう そして 出来上がったカクテル グラスに注ぎ込まれる 『うわぁ~綺麗な夕陽色』 『どうぞ「EMANON」です』 カップルの前に差し出された 『私こっちにしよっかな』 『ダメだよ、えみは「BLUE HEAVEN」だろ!俺が「EMANON」の第1号なんだから』 ムキになる彼氏 『ちょっとぐらいいいじゃ~ん!陽介のケチ!』 『しょうがないな、一口だけな』 『ホントこの人、子供っぽいんです~』 口先をとがらせながらカップルの女性はエリに愚痴る 『フフ……とっても仲が良さそうで羨ましいですよ』 そんな言い争うカップル 『…………』 二人をエリは遠い目で見つめていた 『おいしぃ~~♪』 『ん?どれどれ――おぉ~ホントだ!おいしいな』 喜んでいる二人を見ながらエリも微笑む そして、隣には―― 親指を立てながら視線を投げ掛ける葉山の姿 『……マスター……』 軽く会釈をする 感謝の意を込めながら―― 『ねぇねぇバーテンさん』 『――あっ、は、はい』 まだ呼ばれ慣れず、ぎこちないエリ 『私に、何かカクテルの作り方教えてくれませんか?』 『――いいですよ』 『何、俺に作ってくれるの?』 『……はぁ……まぁ、こんな人ですけど、カクテルは好きみたいなんで私が作ってあげよっかなぁ~なんて』 『分かりました』 頷くエリ 『ところでバーテンさんはそんな人いないんですか?』 『―――え!?』 『きっとこんな綺麗な方だから、お付き合いされてる方はいますよね』 女性の言葉に 『…………』 視線を落とす 『……そう……ですね……』 その視線はグラスのカクテルへ 『この……カクテルも……』 ある男性の顔が浮かぶ 『飲んでもらえたら嬉しいな……って……』 そう答えるエリの頬は少し朱みがさしていた 『…………』 と、その時―― 〈ガタン!〉 店の入り口近くのテーブル席についていた男性客が立ち上がった 『……………?』 エリは、ふとその男性客を注視する 何故か分からないが―― 存在感のある男性客 〈バタン!〉 店を出ていった 『………?』 『バーテンさん!もう一杯♪』 『――あっ!はい』 一瞬、胸に抱いた不思議な感覚―― 疑問すら感じず無意識の中でそれは消えていった――
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