EP.2 夢の日のドラマ〜Thanks for the Dream〜

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『あの……私の名前は……“鎌倉エリ”なんですけど……』 困惑するエリに 『知ってます』 相模という男は即座に答えた 『なんで………そのぉ……』 エリは、そこまで言いかけ 〈ゴホン〉 軽く咳払いをする そして言葉を選ぶように慎重に口を開く 『その……話って……何ですか?』 『この場で差し支えなければ――』 相模は、エリの顔を見たあと葉山に目を映す 『…………』 『…………』 押し黙るエリ そんなエリを見かねた葉山 『仕事のほうはいいよ。何とかなるから――』 『……マスター……』 『じゃあ、すぐ近くにあったレストランにしましょうか――そこで待ってますから』 相模はそう告げると、一段落ついたかのようにエリ達に背を向け、店の出口に向かっていった 〈バタン〉 『……………』 『……………』 相模が去ったドアを見つめるエリと葉山 『………エリ………』 『………はい?』 『知り合いじゃないのか?』 『……多分……知りません……』 『大丈夫なのか……?』 『私……行っても……いいんですか?』 エリの戸惑い 『仕事のほうは……気にしないでいいよ』 葉山は分かっていた だから、あえて触れずにいる―― 『……………』 視線を落とし、じっと考えこんでいるエリ 『何か……よく分からないが……きっと行けば、エリのためになる気がするな……』 『………マスター』 『……叔父さんとして……そう思うよ』 そう言い笑顔を向ける葉山 『………おじさん………』 葉山の言葉にエリは心を決めた 『行ってきます……』 『うん』 レストラン「Kenny's」 言わゆるファミレスだが、今日は何故か空いている エリが店に入ると相模がすぐに目に飛込んだ 車道側に面したボックス席 周囲の席は空席が目立つが、相模自身、気を使ったのであろうか、一番奥のほうの席だった 《『夏も、そろそろ終わりですねぇ~♪』》 店内にはFMラジオが鳴り響く―― 《『いやぁ~今年の夏もあっという間ですよね!』》 『ゴメンなさい。ちょっと着替えてて……遅くなってしまって』 席に着く前に謝るエリに 『いえいえ、とんでもない!こちらこそ――』 恐縮の言葉を口にする相模 しかし 不自然なほど冷静な口調から恐縮の気持ちはそれほど伝わってこない 席に着くエリ 《『続いてはR.N.夕陽さんからのリクエストで夏になると聞きたくなる涼しげで少し切ない、このナンバーです。どうぞ』》  
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