EP.2 夢の日のドラマ〜Thanks for the Dream〜

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🎵消えた夏灯り🎵 『あの~どこかでお会いしましたか?』 エリは先程から疑問に思っていた事を口にする 🎵戻れない乙女🎵 『……………』 🎵恋におぼれた日々は Oh,oh🎵 相模は少しうつむき 🎵I don't wanna tell you“So long,babe”🎵 『…………フッ』 一瞬、鼻で笑った 🎵夢のうつろいに……🎵 『………?』 🎵身をまかせながら🎵 『……私は貴方の事を知っていますが……貴方は……私の事を知らない……』 🎵誰を待つ夜のしらべOh,oh🎵 そこまで言い相模は右手でメガネの縁を持ち上げる 🎵I believe……“Hold on,babe”🎵 『……今の時点ではね』 🎵なぐさめになりそうもない……🎵 口の両端をゆっくりと引き上げ視線を投げ掛けてくる 🎵砂の埃ろぶSunshine road🎵 笑っている表情などではなかった 何かを訴えかけているかのような…… 🎵面影も通り過ぎてく🎵 『そうですか……』 🎵Dar-da-dan-yeah🎵 頷くエリ 🎵泣いたりしないで🎵 『それじゃ……“初めまして”ですね、相模さん……』 🎵大人になれない……🎵 エリは思い過ごしであったと自分に言い聞かすかのように付け加えた 🎵甘くて愛しい Ah,ah……🎵 『…………』 『…………』 🎵ひまわりが揺れる夏なのに……🎵 『初めまして……鎌倉エリさん……』 🎵Loving you,baby……🎵 『…………』 『…………』 🎵揺れていかされて🎵 『あの………何で……』 エリはもう一つの疑問を思い出す 🎵振り向けば哀しい🎵 『…………』 🎵恋の終わりはいつも Oh,oh……🎵 『え~と………その………』 🎵I don't wanna tell you“So long,babe”🎵 『…………?』 🎵君は心まで……🎵 『何で……私の…………旧姓を……知っているんですか?』 🎵抱かれてはいない🎵 ――『……“平塚エリ”さん……』―― 先程の相模の言葉が耳の奥でこだまする 🎵それが涙に変わるOh,oh🎵 『その名前は……もう15年以上も前に無くなってるハズなのに……』 🎵I believe……🎵 『……………』 🎵“Hold,on babe”🎵 『その疑問にお答えする事は……同時に……私が今日、うかがいたいお話を始めることに繋がります』 🎵忘られぬ波の音は風にさざめくSailin'boat🎵 『…………?』 🎵恋人は……🎵 『私が今日うかがいたい話というのは――』 🎵遠い彼方に🎵 『…………』 🎵Dar-da-dan-yeah🎵 『――東名高速で起きた、ある交通事故の事です』 『…………!!』 🎵互いに大事な🎵 〈ドクドクドク〉 🎵ひとだと決めてた🎵 『今から――15年前になります』 🎵言葉にならない Ah,ah🎵 『……………』 🎵君だけが辛いわけじゃない🎵 『8月初旬――行楽帰りの親子が事故に巻き込まれた』 『……………』 🎵You don't have to be afraid.🎵 〈ドクドクドク〉 🎵Long black clouds will faid away.🎵 『相手トラックの――』 『やめてください!』 🎵Oh,oh,oh,you're my baby……🎵 エリは声を荒げた 🎵oh wah,oh wah…🎵 『…………』 相模は避けるかのように視線をそらす 🎵泣いたりしないで🎵 『…………』 『…………』 🎵大人になれない🎵 『話って……その事だったんですか……』 エリは落ち着きをすぐさま取り戻す 🎵甘くて愛しい……Uh,uh🎵 『…………』 そして遠くを見る 🎵Oh,oh 笑って……🎵 『………残念ですけど……お答えできません』 🎵夢から醒めない Ah,ah…🎵 『…………』 🎵ひまわりが揺れる夏なのに🎵 『私……その時の事……あまりよく覚えてないですから……』 🎵Loving you,baby……🎵 『…………』 『その事故の時だけじゃなくて……なんていうかな……その当時の色々な記憶が……おぼろげなんです……』 『……………』 『当日は……夏休みで……私の誕生日でした……両親は私のために……仕事の休みをとって……家族サービスしてくれたんですね……』 『…………』 『きっと楽しい思い出になっていたんだと思います……おそらく……』 『…………おそらく?』 『………私、記憶がないんです……その最後の一番大事な日の思い出の記憶が……』 『…………!』 『唯一思い出せる手段が……』 そこまで言いカバンに手をやる 『…………?』 そしてカバンの中を探りながらあるものを取り出す 『…………』 『これが唯一の思い出です……』 写真だった―― 幼い頃のエリが写り、その傍らに微笑んでいる二人の大人 『両親と撮った最後の写真……………………らしいです……』 『…………』 『それから私は……母方の実家に養子として引き取られ……その時“平塚”の姓を失いました』 『…………』 『――ジャーナリストさんなら……そこまで調べ上げられてるんですよね……』 『……………』 押し黙っている相模 うつむきながら話すエリ 『…………』 『…………』 ウインドウガラスの外の闇に車のヘッドライトが行き交っている 『……………』 『どこで……お知りになったんですか……この事故の事……』 『…………』 『確かに大きな事故でしょうけど……珍しくないですよね……自動車事故なんて……』 『…………』 『…………』 『…………世間では………一過性の小さな事故だったかもしれない……』 ――ふと相模はうつ向きながらつぶやく 『…………?』 『でも………私にとっては本当に……本当に大きな事故だった』 『…………え?』 『あの事故は……』 『…………?』 相模は顔を上げる 『私がこの道を進もうとしたキッカケでした』 『!?』 相模の―― 真剣さの中に感じる穏やかな表情―― それは心からの彼の言葉に間違い無かった
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